旅に呼ばれて
今となっては何がきっかけか思い出すこともできませんが、
ほんの小さな頃から私はファッションの世界に強い憧れを抱いて育ちました。
当時の私にとってファッション誌はまるで夢の世界のチケットでした。
誌面に登場するモデルやデザイナーたちは≪見られる人間≫、私は≪見る人間≫。
その距離感に憧れを一層かき立て、未来に対する想像はどこまでも続いていったのです。
けれど今、世界は変わり、誰もが≪見られる人間≫となりました。
レストランで素敵な料理に出会ったこと、ロックバンドのライブを見たこと、
アウトドアに出かけてきれいな光景を目にしたこと。
私たちはTwitter やFacebook、LINEなど、いくつものソーシャルネットワークを使い分け、
そして自分たちの身の回りに起きることを発信します。
日々のイベントを発信し、受け取ることが生活に組み込まれて何年が経ったのでしょうか。
今、私たちが自分の人生を楽しもうとする気持ちは以前よりずっと強くなっています。
そしてこれは単なる時代のムードではなく、新しいライフスタイルの誕生だと私は感じているのです。
そんな私たちの生活に対して、ファッションには洋服を届けるということを超えた何かができるはず。
皆さんのライフスタイルとより多くのものを共有するため、私はこのブランドを大きく変える決心をしました。
何か月も考えた末に私が辿り着いた答えは「旅」でした。
多くの方々にとってそうであるように、私にとっても旅はいつでも最大のインスピレーションです。その行き先がパリであっても、ハワイであっても、あるいは軽井沢であっても、旅は人を詩人にします。そんな旅の空気をファッションの中に宿らせること、それがLAYMEEの新たな目標です。
新しい水着を買ったらビーチに行きたくなる。もしくはニューヨークに行くとしたらニット帽を買いたくなる。
その洋服を手にすることで私たちを旅へとかき立てるデザインを生み出し、皆さんのライフスタイルに寄り添った場所にいたい。
そんなコンセプトはルックスだけでなく、トランクに入れても皺にならない素材使いや1枚で色々な着方が出来るデザインなど、機能的な部分へも落とし込まれています。
そして今季、新たなLAYMEEのコレクションで私が選んだ旅先がニューヨークです。
今年の4月、私はその街を訪れることができました。
世界経済の中心、ファッションとカルチャーの発信地、ブロードウェイやNBAといったエンターテイメント。
ニューヨークにまつわる様々なものが出発前から私の心をときめかせましたが、
実際にその街に身を置いてみて最も私を驚かせたのはそこに暮らす人々のパワーでした。
ニューヨークの冬は平均気温がマイナスを大きく下回り、凍てつくような寒さで知られます。
だからこそ私が訪れた4月はニューヨーカーにとって待ち焦がれた季節であり、人々がこぞって外に出て穏やかな気候を満喫する季節なのです。まるで雪が解けて水かさの増した川のように街は賑わい、どのベンチにも誰かが腰かけて温かな世界を楽しんでいたのです。
LAYMEEは“旅”を新たなブランドコンセプトに掲げていますが、
“旅先”は家から遠く離れた場所とは限りません。
ニューヨーカーが4月の街を心から謳歌していたように、ちょっとした通りのベンチから始まる旅もあるのです。だからこそ今季のコレクションではドレスライクなオケージョンスタイル、アクティヴなカジュアルスタイルに加えて、ルームウエアと簡単な外出の両方に使えるリラックスなアイテムもデザインしています。
4月のニューヨークと同じように、日本にとって秋というのは何をするにも絶好の季節。
もし皆さんにニューヨーク行きの予定が無かったとしても、
ニューヨーカーのようにライフスタイルを楽しむヒントは街の至る所に落ちているはず。
それを是非LAYMEEの洋服と一緒に探してみてください。
(LAYMEE デザイナー 中村沙織)